JR福間駅方面から国道495号、通称『海岸通り』をしばらく走ると、海辺に差し掛かる急カーブが現れる。「地図を見なくても、この先に海が広がっていることが分かる」そんな空気をフロントガラス越しに感じ取りながら、数秒先の未来へ期待いっぱいにハンドルを切った。

ビーチと並走するように進んでいけば、まるでセールボートを模したような個性的な建築物が目に入る。『SUN EFFECT』だ。まさに、文句のつけようがないロケーションに当店はある。

（海岸通りを少し走ると、フロントガラス越しにその姿が見えてくる。）

SUN EFFECT誕生の過程を語るうえで、前身店舗の紹介は避けられない。2023年春、『レストランChip』が37年の歴史に幕を閉じたことを機に、この物語は始まったからだ。

今では、数多くの飲食店やマリンスポーツ店などで賑わう西福間だが、前身店の建築当時は、福岡東エリアのビーチカルチャー黎明期と呼ぶべき時代だったと言える。

閉店となったいま、多くの人から、そこで過ごした時間のみならず、存在そのものを懐かしむような声を聞くことができるなど、福間海岸のランドマークと呼ぶにふさわしい存在であった。だからこそ、当店がその”身体”ごと引き継いだことに対し、大きな意味や想いを感じるのだ。

とはいえ本音では、解体が最も現実的な手段だったのかもしれない。店前の福間海岸は、柔らかな砂浜と優しげなさざ波、なにより極上のサンセットをもって、いつも私たちの心を癒す一方、時折見せる自然の厳しさは、強烈な西の風に乗って容赦無く海辺の建物たちを痛めつける。

（前身店舗『レストランChip』時代の建物外観。潮風による老朽化が進んでいた。）

当然、真相は当事者にしか分かりえないものの、前身店の老朽具合が、しっかりとその現実を物語っていたことは事実だ。少なくとも、地域コミュニティから向けられる視線の多くには、”諦め”のような感情が含まれていたと感じている。

解体という行為が非常に残念なのは、そこに存在する”残り香”までなくなってしまうからだ。建物は、地域や時代に流れる空気とともに育まれ、その過程で受ける愛情によって言葉にできない個性と魅力を発するようになる。

実際に、解体を惜しむほどの雰囲気が前身店には存在していた。そうでなければ、窮地に立たされたランドマークが『SUN EFFECT』として息を吹き返す未来は訪れなかっただろう。いま、目の前で繰り広げられようとしている物語は、福間海岸を愛するすべての人たちが叶えてくれたと言って過言ではない。

時代の移り変わりとともに、この町も大きく変貌を遂げてきたが、根底にある海への愛着は、形を変えながらもアイデンティティとして生き続けているような気がしてならない。当店には、その象徴の一つであって欲しいと願うばかりだ。

（店前のビーチでは、人々が思い思いの時間を過ごしている。）

非常に長い前置きにお付き合いいただいた形だが、そんな地域の誇りとなるべく、新たなランドマークが発信するテーマは『Set your Everyday』。

訪れる人々の心と身体にとって大切なものをセットしていただき、輝かしい毎日を過ごしてもらいたいという想いが込められている。具体的には、『光の道』や『かがみの海』と呼ばれる、太陽や海を起因とするスポットが注目を集める福間エリアにあって、親和性の高いサービスを提供する複合施設だ。

勘違いしてほしくないのは、それらは決して一過性のものではないということ。独自のコミュニティが存在するこの場所だからこそ、長きに渡り愛してもらえるコンテンツとなれるはずで、いつの日か、この町の新たな文化へと昇華することを期待したい。

ようこそ、SUN EFFECTへ。

この場所を訪れる全ての人々にとって、記憶に残る”海辺のひととき”を約束してくれそうだ。