SUN EFFECT Set your Everybody

 

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第三章 挑戦

2023/10/12

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昼時の空腹を満たしてくれそうな、濃厚な香りが充満していた。
数週間後のグランドオープンを控えたSUN EFFECTの1階、レストラン&カフェへ足を踏み入れた時のことである。

嗅覚を刺激されたのも束の間、こちらの食欲に追い討ちをかけるよう「ジューッ!!!」という飲食店特有の力強い音が聞こえてきた。

その臨場感は、キッチンが遠く隔離された設計の店では味わえない、ある種の快感と言っていいだろう。入口を抜け、ホールまでの動線脇にあるセミオープンな調理場を目にすれば、訪店早々『当たり』への期待値がグッと高まるはずだ。

それはどこか、ファミレス流行前の時代に多く存在していた”町の洋食屋”を想起させるようである一方、提供されるメニューやサービス、店内の居心地を体感すれば、実際には180度異なる世界であることに気付かされる。


(グランドメニューの一部。洋食らしい、濃厚で温かみのある空気感が食欲をそそる。)

複合施設を謳うSUN EFFECTだが、従事するスタッフや入店可能なゲストの数、割り振られた店舗面積から考えれば、飲食事業こそ、この店の顔と呼ぶにふさわしい。だからこそ、その航海を大きく左右することになるクルーの選定には非常に神経を使ったと聞いている。
人材に纏わる話の中でも、前職では、同じ『ホテルオークラ福岡』にて上司と部下にあたる間柄であった支配人と料理長の関係性は興味深く、話を聞くうちに、それぞれの想いにまでスポットを当てたい気分にさせられた。


(左:料理長の八尋氏、右:支配人の川崎氏 偶然にも同じ船でタッグを組む形となった。)

「オークラ出身という背景は自分の誇りにしています。トラディショナルな風土のなか基本を重んじる姿勢など、多くを学ぶことができました。」とは、若き料理長。

その肩にかかるプレッシャーをどう捉えているか尋ねてみたところ、「意外と楽観的に過ごしてますよ(笑)」と、拍子抜けする一言が返ってきた。

だが、「ゼロベースからのメニュー開発だけでなく、チームで調理をしていくにあたってのオペレーション、その他にも食器選びとか色々。自分が求めていた”挑戦”に対して、やりがいと責任を感じる毎日です。」と、好青年らしい穏やかな表情から一変、非常に鋭い眼差しを持って語ってくれたことが印象深い。


(普段は物腰の柔らかい好青年だが、仕事に向ける眼差しは鋭さを増す印象だ。)

続けて、「一口にホテル勤務と言っても、様々な価格帯やサービス内容の部署を経験してきました。調理って培った技術や経験を応用して、いかに自分のイメージに落とし込めるかだと捉えています。そう思えるのは、オークラで培ったブレない基礎が自分の中にあるからで、僕にとってのなによりの強みだと思ってます。」

ここに移ったからこそ新しいことを沢山やりたいですか?と言う問いに対しては「先ほど言ったように僕にとっては全てがチャレンジなので。自分自身も楽しみにしていることは事実ですが、あくまで一部の要素にすぎません。ただ、自由に発想を具現化しやすい環境ですし、実際、すでに形にできたものもあります。だけど、まずはなにより『当たり前のことを当たり前にやる』っていう姿勢を継続していきたいという気持ちが強いですね。最低限それがなければ、長く愛していただける店にはなれないと思いますから。」と、内に秘めていた想いや信念をハッキリと言葉に示す様には、彼の料理を口にしてみたいと思わせるに十分な風格が漂っていた。


(デザート用のオレンジコンフィ。何度も何度も熱を入れては冷ましてと、手間を省かずに繰り返していく。)

そして、その言葉に呼応してくれたのが店舗全体をマネジメントする支配人だ。
「同じプロである私から見ても手を抜かない料理人なんですよ。自分だったら、ここまでやれるかな・・・って正直思うほどにね(笑)彼の言う『当たり前』は、店や作る人間のスタンスによって全く基準が違うんですが、それを高いレベルで持ち続けられるのがうちの料理長と理解してもらえると、彼の真摯な人柄が伝わりやすいのかもしれませんね。」と、太鼓判を押す。

さらには、「ステージは違えど、私も若い頃は彼と同じように沢山のチャレンジをしてきました。この店に支配人というポジションで呼んでいただいて、改めて、自分たちの時代は終わったということを実感しています(苦笑)ただ、彼のような若い人材ならではの発想をエネルギーに新しい時代が作られていくことは間違いないですし、とにかく今は、自分がやりたいようにやってほしいと、それに尽きます。この店で作ったものに限っても、私では考えつかないようなアイデアだったりするんですよ。だからこそ私は、困った時には手助けをしたいと思えるし、そのためにも彼がやりやすい環境を整えていきたいなと。あとはお客様が、気軽に何度でも足を運びたくなるような雰囲気やサービスを作っていきたい。これは、店舗全体として目指しているところですね。」そう語る支配人の表情には、自身が最も料理長へ期待している人物であること、そしてその先に地域とSUN EFFECTの明るい関係を描いていることが溢れ出ていて、それを悟ったこちら側まで嬉しい気分にさせられるのは、彼らの人柄だからこそ成しえる、素敵な要素なのかもしれない。


取材前まで「SNS全盛の昨今、ロケーションを売りにした空間であることで、妙に料理のクオリティに対して懐疑的な目線を向けられてしまうのではないか」と、ひそかに危惧していた。しかし、彼らの話を聞くことで、SUN EFFECTに来て『場所にお金を払った』というような気分で店を後にすることはないと感じている。

どうにもカフェという言葉を使うと『海辺のひとときに花を添えるための料理』と思われがちな一部世論があることは事実だが、この店ではそれは逆説的な見解であるということを伝えたい。どれだけ美しい青が目の前に広がれど、彼らこそがこの船のオールであり、みなさんと共に、前向きな未来へ進もうとするのもまた、彼ら自身であることは明らかなのだ。

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