SUN EFFECT Set your Everybody

 

History

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第二章 前進

2023/09/22

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SUN EFFECT前身店舗の『レストランChip』は閉店までの数年間、営業しているのかいないのか、周囲の人からみれば、その詳細が分からないような雰囲気で佇んでいた。

 

実際には、配達専門の弁当屋として営業を続けていたわけだが、2019年に久しぶりにこの場所を訪れたとき、「やけに寂れてしまったな・・・」という感想を持ったのが正直なところだ。

(活気を失ったChip店内。かつてはここで多くの恋人同士や家族などが海辺の時間を過ごしていた。)

ホールには雑誌や小物等が散乱し、飲食店の命とも言える厨房が発する空気にも、かつてのランドマークが放つ存在感は微塵も残っていなかった。

「ここをたたむ。」

 

そう言い放った店主の声は、やけに哀愁を感じさせるものであったし、店を続けること自体にしっかりと諦めをつけているようにも見えた。だが、私はその言葉を信じる気にはなれなかった。その決意とは裏腹に、愛着ある空間を失うことに対し、大きく後ろ髪を引かれているような雰囲気を感じたからだ。

 

これまで、多くの人々がレストランChipと福間海岸が放つ魅力の虜となってきたように、店主自身もまた一人のファンであったということを、私はそのとき理解した。そして、その気持ちを慮れば、閉店を諭すような気分にはなれなかった。

 

その後、見立て通り何事もなく歳月は経過したのだが、2022年の秋、突然転機が訪れる。

 

「本当にたたもうと思う。」

 

3年ぶりに耳にした電話越しの声は、以前のそれとはまるで違う、物事を整理することに対する決意を滲ませるものであり、不思議と前向きなニュアンスまで感じ取ることができた。

 

空白期間に、どんな心境の変化があったのかは分からなかったが、「Chipごと引き継いでくれる人を探すというのはいかがですか?」という私の提案に対し、少し戸惑いながらも、嬉しそうにこぼした笑みを通じて、その答えは見つかったように思えた。

 

決して「この場所に」ではいけない、「この船に」新たなキャプテンを迎え入れることを望んでいると感じた。それは同時に、この町のコミュニティの想いでもあると、3年前にChipへ恋焦がれていた店主の姿を記憶の中で追うことで、私自身も気づくことができたのだ。

(いかにも歴史を感じさせる店構え。時代の空気に合わせた改装が必要だった。) (2階の様子。なんとなく、時が止まっていたような空気が伝わってくる。)

紆余曲折を経てSUN EFFECTが誕生したいま、この建物は訪れる人々の心身をセットする施設としての使命を果たしながら、あらゆる縁を繋ぐ場所になると確信している。重ねてきた歴史や、人々から向けられる愛着が、結果としてそのような時間を結ぶと思うからだ。

 

再生の過程だけをとっても、ここ福津がSUN EFFECTを経営する株式会社NOKYD代表者の出身地であったこと、そして代表者自身にも沢山の思い出が残る建物であり、建築に精通している会社であったことなど初めて彼らと出会った瞬間に、素晴らしい縁が巡ってきたと感じたものだ。

 

また、レストランの支配人と料理長は同じホテルオークラ福岡出身の上司と部下にあたる間柄であったそうだ。この組み合わせ自体、人材を募集していく過程で偶然に起きた出来事であったそうで、互いが入社後にその事実を知って驚いたというのだから面白い。両者とも福津に縁のある人間ではなかったが、今まさに、同じ船に引き寄せられてここに居る。

 

そして、このようなストーリーをしたためている私自身も、その一部だと思っている。目の前で繰り広げられる数々の縁に目をむければ、偶然という言葉で片付けようという気には到底なれない。

(同じ想いのもと集まったクルーたち。SUN EFFECTの「再生」は、建物の復旧だけにとどまらないのだ。)

福間海岸とレストランChipが多くの人々を惹きつけ、その関係をゆっくりと育んできたように、「この建物をもう一度再生する」という目的に多くの人間が集まり、知恵を出し合うことで、新たな賑わいと関係を創出しようとしている。

 

レストランChipから、SUN EFFECTへ。その承継はやはり相応しい行為であったのだろう。

建物は、人の想いがあれば何度でも息を吹き返す。だからこそいつまでも、愛してもらうことができると信じている。

寄せては引いてを繰り返す店前のさざ波を見ていると、時代のめぐりとともに、我々自身をリノベーションできるかどうかの方がはるかに大事だということに気付かされる想いなのだ。

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