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第四章 再会

2023/10/16

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自身の成長や時の移り変わりとともに、その見え方まで変化していくことは、ヒトとモノゴトの関係における最大の醍醐味かもしれない。SUN EFFECTの総合プロデュースを手掛ける株式会社NOKYD代表にとって、故郷であるこの場所がそれにあたる。

2022年秋、この店の前身『レストランChip』の売却情報を目にした。思い返せば大学時代、仕事として立ち上げたイベント事業の打ち合わせをしたり、慣れない珈琲を口にするなど、自身にとって大人への階段と呼べる建物であったからこそ、当時感じた、怖いもの知らず特有の高揚感までもが記憶と共に甦り、いま置かれた状況にリンクしているように思えた。

購入への決断に一切の迷いがなかったのは、歳を重ねるごとに「地元になにかを作りたい」という想いが強くなっていたからだ。そして、その実現に向けてイメージ(期待)していたプランの一つとして、この建物の再生は既に含まれていたと言うから面白い。

だからこそ意外だったのは、「決して、地元への思い入れみたいな感情で買ったわけではないんですよ。」というカミングアウト。

「イベントの企画にはじまり、様々な事業やプロジェクトを作ること、サポートすることを軸に会社を経営してきました。酸いも甘いも沢山経験してきたわけですが、そこで磨いてきた嗅覚が、幼い頃から遊び場としてきた福間海岸のポテンシャルを人一倍評価していたんです。買った後に何をするかは決まっていなかったけど、この町を出た頃と明らかに違うのは、少なくとも何かができる自信があったことと、頼り甲斐のある仲間に恵まれていたこと。そして『自分の成長を地元に還元する』ということに対する興味が高まっていたことです。繰り返すようですけど、思い入れとは全然違います。普段からやることは色々なんですけど、常に面白いものを作りたいっていう一本筋を通しているつもりで、その中に『地元で一旗上げてみたい』みたいな気持ちがあったということですね。」


(株式会社NOKYD代表の梶原氏。やはり地元。青の背景がよく似合っている。)

この話を聞いた時、「つまるところ、愛しているのでは?」なんて矛盾を感じたことも事実だが、一方で、その微妙なニュアンスを理解できた気もしていた。故郷と人の関係はとても複雑で、誰しも簡単に定義できないものであると思うからだ。

船とそのキャプテンが大海原へ自由を求めるよう、彼自身が望む方向へ進んだ結果”故郷との再会”が待っていたと捉えれば、より一層のドラマを感じることもできるだろう。

事実本人も「結果的に、僕自身が携わる時間が大幅に増えているんですけど、これまでにないくらいの熱量で地元と向き合えています。それは間違いなくこの建物のおかげ。日々、良いところがたくさん見えるようになってきていて、その気づきを多くの人たちに届けたい。」と話してくれた。

2階にサウナを展開した裏側について尋ねてみたところ、「サウナって昨今ブームになってますけど、実際は何十年も前から定着している大衆コンテンツですよね。元来、身近にあった娯楽の一つをリブランディングすることで、コミュニティ全体が新たな一歩を踏み出している。その辺の要素が、このプロジェクトと大きく通じる部分があると感じていて。あとはシンプルに、福津の財産であるこの建物と海を楽しむならコレしかないだろうって(笑)」

(サウナ内整いスペースにて。視覚的な要素も相まって、本当に海に浮かんでいるようだ。)

「それと、これまでにもたくさんサウナを作ってきた経験があったので、設計にあたってのクセも熟知していたし、最適な施工チームを組めていたことも大きな要因ですね。サウナ=大衆的であるという考えにブレはないんですが、一方で、愛好家の方や、今っぽさを求める方でも満足できるレベルに仕上げつつ、誰しもが日常的に使いやすい価格で提供できる見込みです。」

この話を聞いて、『ブーム』や『一過性』などという存在とは真逆のポジションにあると感じたのは私だけではないはずだ。「地域に根付く場所になってほしいからこそ、大衆娯楽のいち象徴であるサウナが必要だった」という視点には、思わずハッとさせられた。

「僕らは、飲食やサウナの専門事業者ではないけれど、ポテンシャルのある空間やロケーションを最大限活かすことに関しては専門です。そのうえで、福間海岸という財産を持つこの建物がどんな姿であることが地域にとっての幸せなのかを考えたい。長く地域に根付くことを目標にしているからこそ、大事にしていきたい要素ですね。」

どれだけの期待を抱いても、実際に再生された様を目にしても、未来そのものが不確定である限り「確実に」などと断定できる要素など存在しない。だが一つ間違いないこと。福間海岸にとって頼もしい男が帰ってきた。

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